57才 女性 出産前の画像診断と出産後に我が子と対面した時

私は新生児を知りませんでした。

赤ん坊がどういう具合に生きているのか、どう自己主張するのか、どうおっぱいを飲むのか、その他ほとんど知りませんでした。


妊娠中の画像診断では異常は認められませんでしたが、渡された画像では、私にはよくわからない白いものが見えるだけでした。

まだ画像技術が発達していない頃ですので、今なら違うかもしれません。

とにかく私は、赤ちゃんといわれても、ぽかんとしているばかりでした。

月が満ちるうちに子供は大きくなり、画像に人間(のようなもの)が写るようになりました。


それにしても、お医者様が「ほら、ここが頭。

ここが足。

お腹が見えるでしょう?」と言われた時、頭らしいものはそれらしく見えましたが、足やお腹や手やなどわからなかったのです。

わが子の形がわからないなんて、私は母親失格かも…と誰にも言えずにいました。


臨月頃の写真には、赤ちゃんの顔が写っていました。

お医者様は、「ほら、はっきり写ってますよ。

ここが鼻でしょう。

目がこれですよ。

ねっ」と、にこにこされています。


なんと、私には歪んだ人の顔が見えました。

額が前方にとんがって張り出し、目がぎょろりとした、斜め横の顔でした。


これが夫と私の子?あり得ないだろう。


夫に画像を見せた時、夫の反応は覚えていません。


こんな宇宙人か縄文人みたいな子が生まれたらどうしよう。

私は心底、戦々恐々としました。


いよいよ出産の時、体が裂けるかという程の痛みを経て対面したわが子は、人間の子でした!いとけなく、くったりと私に身を任せる赤ちゃん。


宇宙人でなくて良かったと、私は本当に安堵しました。


それからの赤ん坊の、なんと可愛いことでしょう。

毎日毎日可愛くてしかたありませんでした。

ちなみに成人した今でも、寝顔が可愛いです。



あるお母さんの妊娠時の思い出を、聞いたことがあります。

妊娠がわかって病院を受診した時のことです。

画像診断の写真を見せられて、まだ受精卵の赤ちゃんが愛しくて嬉しくて、涙が出てきたそうです。

「この時期にこれだったら、生まれたら私はどんな状態なんだ?」と思ったそうです。


その話を聞いたとき、そういうものなんだと正直落ち込みました。

でも子供が生まれてからの私は、子供を可愛いがっているのだから、それでいいと自分を納得させました。



私と同じように、わが子を可愛いと思えない母親がいるかもしれません。

そういう人には、そうなる理由があったりします。

バランスの取れた母親というのが、私の理想の母親です。

難しい状況もあるでしょうが、周囲のサポートがあれば、母親らしくなれるのではないかと思います。

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